EHとESの違い③~「幸福度」と二つの「満足度」

「幸福度」と二種類の「満足度」の関係

「満足度」は両義的であると述べました。それを言うなら幸福度はもっと多義的な指標ではないかという批判を受けるかもしれません。確かに幸福度は多様なものです。しかし多様な価値を含むものではあっても、包括的全体的な人生の肯定という意味では一元的肯定的尺度で統一されており、満足度のように相反する両義的な価値ではありません。

外部的・客観的期待水準に対する「満足度」と内部的・主観的期待水準に対する「満足度」、「幸福度」の関係を図にまとめると、次のように表すことができます。

 「満足度」は、ご覧いただいたように、相反する二つの側面を持つ両義的指標であるだけに、これを「満足度」という一つの尺度で測定するのは、データの解釈に混乱を生じ、数値の価値付けという点で困難さがあると考えます。

人は「満足」したいのではない、「幸せ」になりたいのだ

再度「幸福度」と「満足度」の違いを整理してみましょう。

幸福度      満足度

絶対的                 相対的

多義的                 両義的

成長動機              欠乏動機

・成長動機…全体的肯定からスタートし、さらなる成長を目指す

・欠乏動機…期待水準を設定し、ギャップを埋めることを目指す

すなわち「満足度」とは、ポジティブ、ネガティブという、相反する二つの意味、価値を持つ相対的基準に対する充足度を意味する指標であり、人間にとっては、欠乏動機となる作用を持ちます。     

これに対し「幸福度」は、多様性があるが幸福の価値は一貫してポジティブであり、自己の存在を全体として肯定することからスタートし、さらなる成長を目指すという成長動機を作用とする概念です。

「満足度」を否定するわけでは、けっしてありませんが、従業員の状況を測定する指標として、「満足度」だけで構成することには大きな問題があり、「幸福度」を、より根本的、全体を包括する指標として導入すべきであるというのが筆者の考え方です。

「満足度」は有用ですが、従業員にとって、人間にとって最終的なゴールにはなり得ないと考えます。人は「満足」したいのではない、「幸せ」になりたいのだ、そう考えます。

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