藩校が日本の近代化に果たした役割-儒教が日本の労働観に与えた影響①「幸福」とは何か(その28)

儒教が日本の労働観に与えた影響

先に述べたように日本では宗教として信仰されたというよりも、日本人の生活、労働の道徳観、規範形成に大きな影響を及ぼしたと言えるでしょう。

日本に儒教が伝わったのは仏教よりも早く、諸説ありますが6世紀初めには伝来していたものと推定されています。しかし室町時代までは貴族、仏教の僧侶、武士の一部等の知識階級の教養に止まっていました。

儒教的道徳観が日常生活や労働の倫理、規範として本格的な広がりのきっかけとなったのは徳川幕府が、朱子学を官学として採用してからと言われています。江戸時代の武士階級は、その地位を保持する上からも、学問を学び教養をつむべきものとされ、儒教教育がしだいに組織化されました。

藩校の全国整備と近代化に果たした役割

江戸時代の最高学府である昌平坂学問所(昌平黌)に倣って、次第に全国に藩校(藩学)が設置され、江戸中期以降には二百数十校に達しています。

 藩校の教育は当初は儒学が中心であり、孝経、四書(大学・中庸・論語・孟子)、五経(易経・書経・詩経・春秋・礼記)等が一般に重んぜらました。

 藩校は各藩の藩士の教育機関として整備され、藩士に対する就学の義務制は早くから実施されましたが、庶民の入学を許すものも増加しました。藩校は、その教育内容はしだいに近代化の過程をたどり、小学校の母体となった寺子屋と並んで、学制発布後の中等・高等諸学校の直接または間接の母体となり、藩校で養成された人々が近代日本建設の中心的な役割を担ったのです。
藩校出身者による教師を通じて伝えられた儒教的な道徳観は、その後の日本人の労働倫理に強い影響を与えたことは間違いありません。

(松島 紀三男 イーハピネス株式会社 代表取締役)



参考資料:白書 「武家の教育」『学制百年史』文部科学省

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