「従業員幸福度(EH)」経年変化-コロナ禍以後、日本人の幸福度はどのように変化したか?(ハピネス*ウェルビーイング・メーター)

従業員幸福度調査毎月統計経年比較(2021~2023年)

従業員幸福度調査毎月統計の経年比較データ(2021~2023年)のご報告です。
全国の働く人びと、あらゆる業種の従業員の方々を対象として「従業員幸福度(EH)」を毎月測定、ご報告しています。
開始以来毎月の調査を継続し三年経ちましたので年度毎の比較結果をお知らせします。
なお、調査項目は弊社が開発した「従業員幸福度(EH)調査®」をベースにしています。
回答数は1万1000名、経年比較には十分過ぎるサンプル数で、毎月調査実施の平均ですので季節変動も補正されていると考えられます。

【2021~23年「従業員幸福度(EH)」推移全体グラフ】


(N=11,000)

【所見】

2021年から22年、23年と年を追うごとに「幸福度」は向上

従業員幸福度調査の2021~2023年経年比較は、実質的にコロナ禍の最中からコロナ禍の終息過程、コロナ禍明けに至るまでの「従業員幸福度(EH)」の推移を示すものと言えるでしょう。
2020年1月15日に新型コロナウイルスの感染者が国内で確認されて4年が経過しました。
「従業員幸福度(EH)」のデータは2021年から2022年、2023年と全体的に幸福度が向上しています。

コロナ禍明けに先立ち「幸福度」が向上している?

コロナ禍による「幸福度」の変化を見ると、まだコロナ禍明けが見えない2022年には早くも「幸福度」の向上が見られ、意外に「幸福度」の改善が早いように思われます。
日本のコロナ禍のピークがいつかというのは、議論の余地がありますが、重傷者のピークに焦点を当てると2021年夏、感染者のピーク(オミクロン株流行)に焦点を当てると2022年夏、死者数のピークでは2023年1月ということになります。
日本における実質的なコロナ禍明けは2023年5月8日に、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行したタイミングと言えるでしょう。
コロナ禍による「幸福度」低下のボトムは2020年には、まだ本「従業員幸福度調査毎月統計」を開始していないので、データが不明ですが、2020~2021年にあることは間違いありません。
「幸福度」の変化の要因はコロナ禍だけではなく多様な要因が絡み合っていますが、ここ数年「幸福度」変化の最大要因はコロナ禍であることは間違いないでしょう。
その意味では、コロナ禍の最中である2022年、2023年と「幸福度」が向上しているのはなぜでしょうか。

「幸福度」の回復が先行しているのは「レジリエンス」と「適応的選好形成」の影響?

この要因としては3つ考えられます。
第一は、コロナ禍に対する科学的見解の普及と対応策の整備、新型コロナウイルスの弱毒化(?)による安心感の拡がりです。新型コロナウイルス・ワクチンの開発成功は、ワクチンの是非、副反応のリスク等諸説あるものの、人々に「安全・安心」を提供したことは確かです。それによって闇雲な恐怖の連鎖から「正しくリスクと向き合う」姿勢に国民全体が移行したこともあると考えます。テレワークの定着によるワークスタイル、ライフスタイルの変化も影響している可能性もあるでしょう。

第二は人びとの不運な事態への適応力、危機対応能力として、幸福に関する「レジリエンス(復元力)※ここをクリックし解説記事参照」が働いている可能性です。
状況が改善していないにもかかわらず、幸福度は向上、改善する原因として幸福に関する「レジリエンス(復元力)※ここをクリックし解説記事参照」の機能が働いている可能性は前月までにも何度か指摘した通りです。
さらにこの根底には、人間の「適応的選好形成※ここをクリックし解説記事参照」」と言い、
状況に順応し、厳しい状況に合わせて自己の欲求を制限することを合理化する心の働きが有ります。
このような人びとの心理的な防衛機能が働いている可能性があると推論しています。
上記以外の客観的状況(ウェルビーイング度合い)は、ウクライナ戦争の継続、円安の継続による諸物価高騰による働く人々の生活、中東危機等、むしろ客観的ウェルビーイング度は悪化しているとも見ることができるので、上の三つが「幸福度」向上の主要な要因と考えられます。

「働く幸福度」(将来)のみ2021年から2022年は、逆に悪化

全般的に「幸福度」の向上が見られる中、「働く幸福度」(将来)のみ2021年から2022年は、逆に悪化しています。これは何を意味するのでしょうか?
「働く幸福度」を巡る中長期的将来についての展望が悪化しているということは、ウィズ・コロナやアフター・コロナの未来が、自らの「働く幸福」につながらないと感じている可能性があります。
日本経済、産業界はコロナ禍から着実な回復、力強い反転攻勢へと転じつつありますが、自組織に所属したままでは、未来の「働く幸福」は得られないと感じている勤労者が多いことを、どのように見るべきでしょうか。
個々の組織の発展と、従業員の「働く幸福」の両立、Win-Winの成長こそが、ひいては日本全体の再創造につながると考えます。
微力ではありますが、弊社も、より多くの組織で従業員の「働く幸福度」(将来)の阻害の原因を明らかにし、その向上に役立つ処方箋の提供に努めていきます。

2021年と2023年で「総合幸福度」(現在)が「働く幸福度」「私生活の幸福度」を上回るのは「社会的幸福度」が改善?

極めて特異的なことは2021年と2023年で、「総合幸福度」(現在)が「働く幸福度」「私生活の幸福度」を上回ったことです。
「総合幸福度」は「働く幸福度」と「私生活の幸福度」を包含、総合したものというのが「従業員幸福度(EH)」の仮説ですが、前に言及した通り、共同主観としての「社会的幸福度」とも言うべき潜在的因子が存在するかもしれません。
これらは今までの経験、データの蓄積から言って極めて異例なことです。
考えられる仮説として、「幸福度」の全体である「総合幸福度」を構成する因子として「働く幸福度」「私生活の幸福度」以外に、もう一つ重要な因子が影響して「総合幸福度」を「働く幸福度」「私生活の幸福度」よりも低い値へと引っ張ったということです。
それは自分の仕事や私生活以外の言わば「社会的な幸福度」と言えるものではないかという仮説を筆者は立てていますが、このことは研究してみる必要がありそうです。

(将来)の「幸福度」が(現在)の「幸福度」より2021~2023年で一貫して低い

<現在>の幸福度よりも<将来>の幸福度予測が低い傾向は2021~2023年で一貫して継続しています。
「従業員幸福度(EH)調査® 」を開発したのは2013年ですが、初めて全国調査を実施したのは2014年です。
2014年の「従業員幸福度(EH)調査」では、(将来)の「幸福度」が(現在)の「幸福度」を明らかに上回っていました。
ところが、2019年に再度調査した際には、(将来)の「幸福度」が(現在)の「幸福度」を下回っていたのです。
この間、少子高齢化を筆頭に、日本の勤労者の客観的幸福の基礎的条件(Well-being)が悪化していることの影響と考えられます。
本調査からは、日本の経済、社会の動向に対して未だ「幸福」の展望が持てていない様子がうかがえます。

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