EHとESの違い②~「ES(従業員満足度)」の問題

  「満足度」をめぐる問題

「満足度」と「幸福度」が異なることを既に述べましたが、「満足度」がどういう特性を持つのか、もう少し詳しく見ていきましょう。

「満足度」は相対基準、動くゴールポスト

「満足」とは期待水準に対する充足度という関係に表すことができます。すなわち、

S(満足度)=期待水準-充足度 としたときに、

S≧0                   ならば→満足

S<0                   ならば→不満

という関係が成り立つと言えるでしょう。

つまり「満足度」とは、期待水準の充足度という、基準となる値との相対比較によって決まるという性質を持っているのです。

「満足度」の持つ両義性

ここで問題となるのは、期待水準の設定の仕方です。期待水準には大別して二種類が存在すると考えます。

一つは外部的・客観的期待水準であり、一般的に誰が見ても共通の期待水準です。たとえば電気、水道などの生活インフラがきちんと供給されているといったものです。この場合、24時間、365日、それらが供給されているのが期待水準であり、誰が見ても「当たり前」の共通性ある基準です。実際には個人によって期待水準の変動がありますから、純粋に客観的とは言えませんが、比較的世間相場のようなものが形成されやすい外部的な基準と言ってもいいでしょう。このような期待水準に対する満足度は反応としての満足度であり、いわば「受動的満足度」でしょう。

二つ目は、内的・主観的期待水準であり、人生の目標などがその典型です。あくまで基準の設定は個人の主観によりますから、基準となる期待水準は人によって個別的に大きく変動します。この場合の期待水準は自ら設定するものであり、不満は主体的に創り出すものです。ですから「能動的満足度」と言えるでしょう。

外部的・客観的期待水準に未充足の状態、不満があることはネガティブな意味がありますが、既に述べたように内的・主観的期待水準を能動的に創り出す不満を持つことにはポジティブな意義があります。したがって、満足度はそれが充足されていない状況についてネガティブな意味とポジティブな意味の二つの相反する意味合いを含んでいるということになります。すなわち両義的な価値を持つ基準を単一の尺度に収束させ、測定しようということに大いに問題があると思うのです。(松島 紀三男)

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