最新の調査結果で見る日本の従業員幸福度(EH)の現状と課題
第一節 日本における「従業員幸福度(EH)」の現状
「従業員幸福度(EH)」の日本における現状について見てみましょう。なお、ここで用いるデータは、全て筆者が2019年10月に実施したアンケートによる全国調査(2000件)をもとにしています。
「幸福度」の未来予測が現在の「幸福度」より低い
まず、下のグラフをご覧いただきましょう。
図 4【現在の「幸福度」と未来の「幸福度」(予測)】
縦軸:0~10の11段階,数値は全体平均値 N=2000
ご覧いただくとわかる通り、現在の幸福度が肯定的、すなわち幸せであると感じている人が多いのに対し、未来の幸福度(将来予測)は否定的、すなわち幸せになれそうにないと、悲観的に見ている人が多いのです。現代日本の世相、社会経済政治の動向を見るとさもありなんという感じもしますが、筆者は最初このデータを見た時に驚愕しました。
同様の調査を2014年に実施したことがあるのですが、その時のデータでは未来の幸福度予測は現在の幸福度よりも高く、多くの人が「将来はもっと幸せになれるであろう」と見ていたのです。2014年、未来にさらなる幸福、希望にあふれる人生を思い描いていた多くの日本人が、たった5年で「将来の自分の人生は明るくない」と、未来に悲観的になってしまったのはどういうことでしょうか。
この原因となる背景には、ミクロ的環境要因、マクロ的環境要因の二つが働いていると考えられます。ミクロ的環境要因とは従業員個人が所属している組織や家族との関係、住んでいる地域とのつながりなどのことです。マクロ環境とは社会経済政治地球環境などの要因を言います。
この5年間を振り返ってみますと、従業員それぞれが所属している組織の業績や状況などは異なるにしても、それに大きな影響を与えていると考えられる経済の状況は大きく好転しているとは言えません。労働者の平均賃金は先進国中唯一、低下を続けています。高齢化の波は加速度的に進行し、医療費負担の高騰、給付低下が続く年金問題など社会福祉は後退する一方です。地球環境の問題に目を転じれば、地球温暖化気候変動の影響はますます顕著となっており、昨年の台風の被害は記憶に新しいところです。これらの問題に取り組むのが政治の大きな使命ですが、日本においても世界においても、根本的に有効な政策が打ち出されているとはとても言えない状況であると思います。
このようなマクロ的な環境要因が、アンケート回答者の幸福感に影響を与えこのような結果になったのだと推察しています。(イーハピネス株式会社 松島 紀三男)