ベートーヴェン捏造 -名プロデューサーは嘘をつく- かげはら 史帆 著,柏書房
ベートーヴェン捏造 -名プロデューサーは嘘をつく- かげはら 史帆 著,柏書房,2018.10.15
今年は、ベートーベン生誕250年という節目で、
大々的なイベントが数多く企画されていたのですが、多くが中止になりました。
ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2020も、そのひとつで残念な限りです。
この本は、ベートーベンを敬愛するあまり、勝手連的な押しかけ秘書になった、
シンドラーによるベートーヴェン捏造物語です。
著者の大学院修士論文を下敷きにしているだけあって、丹念なリサーチでベートーベンが捏造されたプロセスがいきいきと描かれています。
有名な交響第5番のエピソード「運命はこのように扉をたたく」というのが、実は事実でないという話は比較的よく知られていますが、
他にもいかにベートーベンのイメージが、このおっちょこちょいな秘書によって作られていったかというのがよくわかります。
歴史上の偉人の伝説は大半が実像とはかけ離れているとも言います。
そこには大衆の英雄はこうあってほしいと言う願望も込められているのでしょう。
そのようなあってほしいイメージをほぼ一人で作り上げたというのも
ベートーベンを敬愛するばかりのことなので、ひいきのひきたおしで自分勝手だけど、憎めないなあと思ってしまいます。
(2020/5/9,松島 紀三男 イーハピネス株式会社 代表取締役)