「幸福」とは何か(その8)「幸福」は欲求しないものから得られることもある
「幸福」は、欲求しないものから得られることもある
第二の問題は、「幸福」を欲求の達成のみに限定することで、「幸福」の可能性を限定してしまうことです。「幸福」は必ずしも主観的欲求の結果として得られるものではなく、偶然や本人の選択によらない他者のはたらきかけによって得られることもしばしばです。
そればかりか、本人の自覚的欲求への執着があまりに強ければ、かえって「幸福」の機会を閉ざしてしまうことさえあります。自覚的欲求へのこだわりが、本人の自覚していない潜在的可能性を開発する障害となることもあるからです。
これは特にキャリア開発において重要な問題と捉えられています。これを回避するためには、また積極的に偶然性を「幸福」の機会として開発するためには、J.D.クランボルツ(スタンフォード大学教授)によって提唱された「計画された偶発性」理論が役に立ちます。
クランボルツは、多くの人を調査した結果、キャリア形成の大部分を偶然の機会が占めている事実を発見しました。
「計画された偶発性」理論によると、初めから自覚的欲求のみのコースを脇目もふらず追求するのでなく、さりとて偶然の出来事を単に待つだけなく、自ら自己の想像力の限界を突破する機会を生み出すことが重要であるとされています。絶えず新しい学習の機会を模索し続けながら、自覚的に定めた「幸福」に至る道としてのキャリアの計画に過度に執着せず、柔軟性を持つこと、こだわりを捨て、信念、行動を変えること、不確実な状況下でもリスクを取って行動を起こすことが「幸福」なキャリアにつながるということです。 高い理想、自己への欲求を持つことも素晴らしいことではありますが、それにこだわりすぎず、意図せざる偶発的な出来事も、自己の限界突破の機会として柔軟に活用することが、より良い「幸福」に至る道だと言えるでしょう。
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