「幸福」とは何か (その1)
「幸福」の本質は何か
三つの「幸福」学説
「幸福」とは何かを論じるにあたって、ここで「幸福」に関する主要学説について触れておきたいと思います。
古来「幸福」とは何かということは、多くの哲学者、思想家によって論じられてきましたが、未だに定まった結論は出ていません。しかし幸福について、様々な議論に共通している共通の要素に基づいて、基本的な分類はなされています。
今日、幸福の定義に関する基本的分類は、イギリスの哲学者、デレク・パーフィットの分類が引用されることが多くなっており、「幸福」について研究する大半の哲学者、心理学者がこの分類を踏襲しています。パーフィットは「幸福」に関する学説を、次の三つに分類しました[i]。
・快楽説(Hedonism Theory)
「快楽」を感じることが「幸福」であるという考え方です。
・欲求達成説または欲求説(Desire-Fulfilment TheoryまたはDesireTheory)
「欲求」の達成、成就が「幸福」であるという考え方です。
・客観的リスト説(Objective List Theory)
人間にとって善なる価値を持つ要素を複数挙げ、これらが良好な状態にあることが、「幸福」とする考え方です。
それぞれの学説の特徴とメリット、問題点と、そこから浮かび上がってくる重要な論点について、次回以降の記事で見ていきましょう。
[i] 『Reasons and Persons (English Edition)』(Derek Parfit 著