「怒りは不幸のもと」アンガーマネジメント① 幸福度・EHを高めるには(その3)

自己の客観的状況を変えるということについて、前回の能力に続き、意思決定の問題について考えてみましょう。

■意思決定に関して重要なこと

幸福になろうと願わない人はいません。しかし、願いだけでは幸福は実現しません。

そのためには行動が不可欠です。いかなる行動をとるのか、意思決定の如何が、 その後の人生の幸福を、大きく左右します。

「とにかく一生懸命にやる」という意欲も大事ですが「何を」「どのように」やるかを決めなければなりません。

人生の幸せを得ようと思って意思決定するわけですが、意思決定の結果として、何らかの幸福のリターンを期待するでしょう。 リターンの裏側にはリスクが伴います。リスクを恐れて行動しなければ、リターンとしての幸せも得ることができません。

ですから幸福実現の意思決定チャレンジは、リスクを取る覚悟も必要になってくるということです。

リスクをとってチャレンジすると言っても、投機と投資は違います。 投機と投資の違いは、リスクヘッジの有無にあると言えるでしょう。

幸福な人生と言う目的達成の方法も、投資をしようと思って、投機に陥らないように注意しないといけません。

大きな成功を収めるには、時に大胆なリスクテイキングも必要ですか、合わせてリスクヘッジもしておかないと、それは人生の投機になってしまいます。 結果として一度きりの自分の人生を「投棄」してしまわないように注意しましょう。

意思決定を、時間軸で考えてみると、とっさの判断に基づく極超短期の問題もあれば、一か月から1年のスパンで見た短期の意思決定、3年から5年の中期の意思決定、10年以上の長期の意思決定の問題に分けられるでしょう。企業の経営計画みたいなものです。

それぞれにおいて重要なポイントがありますが、特にクリティカルな意思決定の問題について考えてみましょう。

極超短期でクリティカルな意思決定の問題として、

・アンガーマネジメント、

短期から中期の問題として

・行動経済学、

長期の問題として、

キャリア・マネジメント

について、取り上げることにします。

今回のテーマは、アンガーマネジメントです。

不幸な事態を招かないために重要な意思決定のポイントは、一時の感情や誤った推論に基づいて意思決定してはいけないということです。

アンガーマネジメントとは「怒り」によって、不幸な事態を招き寄せるような意思決定をしてはならないということです。

幸福になる方法を考えるのに不幸になる事態を避けるというのは、一見消極的な考え方のように見えますが、逆説的な考え方ではありますが重要なことだと考えます。

多くの哲学者思想家たちが幸福になろうと思えば注意深く不幸を避けることだと言っていることも頷けます。

何かを達成しようと思ったならば、全力を傾けても、事態はほとんどの場合漸進的にしか進みませんが、破綻というものは多くの場合一気にやってくるものです。

最終的には破綻という劇的な変化が訪れますが、その原因は短期の決定的な意思決定による場合と、誤った意思決定の蓄積による静かな潜在的な変化が緩やかに進行し最終的に破断界になる場合があります。いずれにしても効果的でない意思決定の結果であることには変わりありません。

短期的な意思決定で特に留意すべきものは怒りのマネージメント(アンガーマネジメント)です。

アンガーマネジメントは極短期の問題と言いましたが、怒りは一瞬でのことでも、その影響は一瞬ではなく、場合によっては、中・長期、一生に及びます。

「怒りは一瞬、後悔一生」なのです。

こんなことを言うと、怒りは悪いことばっかりなのかと思う方がいらっしゃるかもしれませんが、筆者はそんなことはないと考えています。

普遍的正義、道徳に照らして、理不尽なことが行われている時に、ひたすら怒りを抑えて耐え忍ぶことが良いとは思えません。

怒るべき時に、勇気を持って怒ることも必要だと考えます。

怒りを理性的な変革のエネルギーに転化するなら、それは進歩に繋がり、幸福をもたらすでしょう。

しかし、

ただし怒り方が問題です。

場所、状況をわきまえず、衝動的に怒りの感情を爆発させるのは禁物です。

怒りのマイナスのエネルギーはとてつもなく大きいので、しばしば破壊的害悪をもたらします。

怒りの悪を挙げるとするならば、以下の二つにまとめられるでしょう。

1.怒りの相手を傷つけること

怒りを相手からぶつけられると、誰もいい気はしないものです。不快になったり、場が気まずくなったりするぐらいだったらいいのですが、暴言を吐かれて深く心が傷つく場合もあります。怒りのあまり暴力を振るわれることによって、身体的に傷つけられたり、ひどい場合には命を失う場合もあります。

謝罪、損害賠償ではすまない、 自分はおろか、誰も責任の取りようがない、取り返しのつかない災いを相手に負わせることをさえあります。

怒りは感情の核兵器のようなものです。それだけ破壊的エネルギーを持つということを自覚する必要があります。

2.自分の幸福の機会を損なう、不幸の原因を作ること

怒りの報いは自分に返ってきます。相手の機嫌を修復しようがないほど損ねれば、せっかく築いた人間関係を失うことになります。

妻や子供に暴言や暴力を振ったことで、離婚や離反を招き、孤独な一生を送る人もいます。

仕事で部下にパワハラを行う、上司に暴言を吐くなど、怒りに任せて、 貴重な仕事を失う場合もあります。

一時の怒りの感情で、一生を棒に振ってしまうこともあります。そんなことで不幸になるのは、あまりにもったいないことです。

以上のようなことは、自分や他人の経験で、身にしみて感じている人は多いと思います。

分かってはいるけれど、カッとしやすい性格は変えられない、どうすればいいのか、と疑問に思う人もいるでしょう。

確かに、おこりっぽい人もいれば沈着冷静な人もいます。どちらも個性です。良い悪いはありません。決して怒りを基準にして人間を評価するものではないということを申し上げたいと思います。

ではどうすればいいのか?

おこりっぽいとか、冷静だとか、自分の性格、行動特性はきちんと把握した上で、怒りとうまく付き合うことをお勧めします。

自分の性格を変える必要はありません。自分の怒りの癖を知って、テクニックとして怒りをうまくコントロールする方法を知れば良いのです 。

怒りとうまく付き合う方法を、アンガーマネージメントといいます。

これから何回かに分けて、アンガー・マネジメントについて述べていきたいと思います。

今回は最初に誰でもできる、簡単で実用なテクニックを紹介しましょう。

■「6秒間ルール」

アンガーマネジメントの第一歩は

「反射的怒り」を抑えることにあります。

アンガーマネジメントの専門家、

安藤氏は

まず怒りの衝動をコントロールする必要があると述べています。

イラッとした時は、けっして反射的に言い返す、し返すなど反射をしてはいけません。

怒りの感情に支配された状態で、とっさに何かをしても良いことはありません。そのことは先にも述べたとおりです。

筆者の経験でも、確かに反射的に怒って、良かったためしはないなあと、つくづく感じます。

些細なことで夫婦喧嘩をし、気まずい思いで何日かを過ごしてしまったこと。

私はものには比較的当たらない方だと思いますが、つい激昂して家具を壊してしまったこと。

若い頃、同期の友人も、夫婦喧嘩をして壁を蹴破り、足を骨折するというオウンゴールをやってしまい、 松葉杖をついて出社してきたこと。

割と最近では、宴会で酔った勢いで、部下に1時間に渡って暴言を吐き、 せっかく苦労して採用し、将来の幹部候補と期待していた人材に辞められてしまった経営者。

こういうことは例を挙げればキリがありません。皆さんも見聞きした例を挙げれば、いくつも思い当たる例があるでしょう。

こういうリスクは、ちょっとしたコツを会得すれば、避けることができるのです。

それは…「6秒間ルール」と言います。

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怒りを感じたら、とにかく6秒待つ。

6秒あれば前頭葉が働き、怒りの感情に理性的に対処しようとする。

まずはどんなに怒りの感情が湧いても、とりあえず6秒は待つ。

(『アンガーマネジメント実践講座』安藤俊介著、2018年、PHP 研究所)

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どうですか?簡単でしょう?

これならやれると思いませんか?

怒りという情動は、人間にとって肉体のようなものです。

誰もが肉体を持っていますが、それをむき出しにすることは非常識であり、犯罪ですらあります。

怒りをむき出しに生きるのは、裸で暮らすようなもので、それでは社会的生活は成り立ちません。

自分の怒りの源、怒りの癖を知れば、「理性」という衣服で装い、「怒り」はむき出しでなく、自らを支える肉体の一部となるでしょう。

「1分の間怒りを爆発させていると、あなたは60秒ぶんの幸せを失う。」

R.W.エマーソン

次回はコアビリーフの問題についてお話しします。

前の記事↓
https://e-happiness.co.jp/how-to-be-happy-%e2%91%a1-about-skill-development-how-to-increase-happiness-and-eh-part-2/

(松島 紀三男 イーハピネス株式会社 代表取締役)

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