ダイバーシティによる幸福度向上② 男女共同参画の実現
ダイバーシティによる従業員幸福度(EH)向上② 男女共同参画の実現
男女共同参画も、日本の組織では著しく遅れた分野です。まだまだ日本の組織は男性中心社会で、世界の国々から見ると女性の参画は遅れています。
特に日本の場合、女性の就業が非正規雇用に著しく偏っており、しかも年齢層が上がるごとに非正規雇用労働者の割合が高くなっています。
男女共同参画白書によれば、平成30(2018)年における非正規雇用労働者の割合を見ると,女性は56.1%,男性は22.2%であり,いずれも前年に比べてやや上昇しています。男女別の年齢別傾向を見ると,平成30(2018)年の15~24歳の層は女性31.1%,男性21.0%ですが,女性では,その後年齢層が上がるごとに非正規雇用労働者の割合が高くなるのに対して,男性では,25~34歳,35~44歳,45~54歳の層で非正規雇用労働者の割合が順に低くなった後,55~64歳の層で反転して割合が高くなっています。
また、正規雇用の場合もリーダー的地位についている女性の比率が二割以下にとどまっているという問題があります。いわゆる「ガラスの天井(資質、能力、成果にかかわらず女性の組織内での昇進を妨げる見えないが打ち破れない障壁のこと)」の証左と言えるでしょう。
男女共同参画白書によれば、常用労働者100人以上を雇用する企業の労働者のうち役職者に占める女性の割合を役職別に見ると,近年上昇傾向にありますが,上位の役職ほど女性の割合が低く,平成30(2018)年は,係長級18.3%,課長級11.2%,部長級6.6%となっています。
女性の就業比率もさることながら質的な面ではキャリアの充実という点で男性と比べて極めて不利になっており、賃金と有用的側面においても差別的と言えるほど低い段階にとどまっています。
これらのデータを見れば、女性のキャリアアップができていないことが如実に表れています。
(出所:男女共同参画白書 令和元年版)
2020年、同一価値労働同一賃金の制度導入によって賃金格差はやや緩和されるとは思いますが、正規雇用の拡大、キャリアアップの機会拡大が望まれます。
男性と女性の幸福度を比較すると概ね女性の方が男性よりも幸福度が高いのですが、三十歳から39歳に限って、女性の従業員幸福度が男性の従業員幸福度よりも著しく低くなっています(2019年10月筆者調査による)。
これは、ちょうど育児子育ての時期にあたっており、本来幸せであるはずの出産育児という生活の中での出来事が、従業員として働く上では仕事との板挟みとなり、大きな負担となってのしかかっていることが原因と思われます。
これには、大いに男性にも責任がある問題です。特に日本の場合、男性の家事・育児の分担が諸外国に比べても、未だに著しく低く、これらが女性に押しつけられている実態が背景にあると考えられます。
男性の場合、30から39歳はむしろ従業員幸福度は、年齢毎の比較で幸福度の高い時期になっており、女性の幸福度と対照的です。この背景には男性と比べて、女性の育児の負担が過重であること、男性の育児家事の分担が不足していることがあると思われ、組織の男女共同参画の支援もさることながら、従業員自らの家事・育児分担の努力と、そのための意識変革が求められていると考えます。
図 3 6歳未満の子供を持つ夫婦の家事・育児関連時間(1日当たり,国際比較)
従業員幸福度を高める上での男女共同参画の問題は、一企業の限界を超える部分も多いのですがそれぞれの組織、職場、従業員個人、従業員一人一人の家庭でできることはいくらでもあると考えます。
組織レベルでは従業員の採用に始まり育成、処遇、労働時間、休日の取得、リタイアメントに至るまで男女共同参画の実現に努め女性が不利益を被らないようにしなければなりません。
職場レベルでは管理者が女性にとって働きやすい環境づくりに努めるとともに職場の仲間同士が協力支援しあって女性の置かれた状況を改善する努力が必要です。
従業員個人では特に男性側の意識改革行動が求められていると考えます。育児家事の対等かつ柔軟な分担を徹底することが何より重要です。育児休業の取得などもまだまだ男性が取得するケースは稀であるのが実態です。率先して育児家事の負担を共同で担う努力が必要ですし組織職場でもそのような意識の啓発、行動を奨励するような努力が必要だと思います。
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(松島 紀三男 イーハピネス株式会社 代表取締役)