仕事を天職にする③~周囲の強制を活用し自己の限界突破を図る
「自分のことは自分が一番わかっている。
天職につくためには
自らの内なる声に耳を傾けて
真に自分がやりたいことに取り組むことが一番大切である」
こういう考え方は概ね正しいでしょうが完全ではないと思います。
逆にむしろ自分の内なる世界にひたすら入り込むことによって、
かえって天職にたどり着く妨げとなることも少なくないのです。
それは未熟な自分が可能性の限界を作ってしまうということによります。
特に若い頃、仕事への想いが純粋なほど、
自分が思い描く天職のイメージ、
仕事の理想が独りよがりで稚拙なものになってしまう危険性があります。
自己の内なる声に正直であろうとすればするほど、
ややもすれば自分の殻にかたくなに閉じこもってしまい、
かえって自分の潜在的可能性を開発する機会を閉ざしてしまうという、
逆説的な事態はしばしば起こり得ます。
自覚的欲求へのこだわりが、
本人の自覚していない潜在的可能性を開発する障害となるのです。
それを避けるにはどうすれば良いのか?
自分が天職の限界を作るのだから、
自分以外の周囲の力を活用すれば良いのです。
そうやって、
積極的に偶然性を「天職探索」の機会として活用することです。
そのためには、これまで何度か言及しましたが、
J.D.クランボルツ(スタンフォード大学教授)によって提唱された
「計画された偶発性」理論が役に立ちます。
クランボルツは、多くの人を調査した結果、
キャリア形成の大部分を偶然の機会が占めている事実を発見しました。
「計画された偶発性」理論によると、
初めから自覚的欲求のみのコースを脇目もふらず追求するのでなく、
さりとて偶然の出来事を単に待つだけなく、
自ら自己の想像力の限界を突破する機会を生み出すことが重要であるとされています。
絶えず新しい学習の機会を模索し続けながら、
自覚的に定めた「天職」に至る道としてのキャリアの計画に過度に執着せず、
柔軟性を持つこと、
こだわりを捨て、信念、行動を変えること、
不確実な状況下でもリスクを取って行動を起こすことが
「天職」との巡り会いにつながるということです。
★周囲から強制されることで自己の限界突破を図る。
若い人たちの悩みとして、
「やりたいことが見つからない」
「あれこれやりたくないことをやらされる」
「思っていた仕事と違う」
ということは少なくないでしょう。
こういう場合、まずは一定期間、
「周りに流される」ということを
積極的に選択することをおすすめします。
金井 壽宏は、このことを
「ドリフト」と言っています。
(出所:『働くひとのためのキャリア・デザイン 』PHP新書)
その人にとって「天職」の正解はなく、
何が「天職」か自分でわからない以上、
周囲の力を借りて、
いろんな仕事を経験してみることで
「天職」と廻り合う
アクションリサーチが有効です。
私自身の経験でも、
新卒で大手の経営コンサルタント会社に就職したのですが、
「やりたくないなぁ」と思っていた
営業の仕事を、
それが新人必須のキャリアパスであるために
「やらされ」
チームマネジメントなんて苦手だなぁと思っていたのですが、
コンサルタントに昇格する条件が
営業マネージャーを努めることなので
ありがたいことに「経験させられ」ました。
仕方なしに経験させられた(スミマセン、感謝してます)、
これらの仕事ですが、
言わば「強制された経験」が、
後にコンサルティングや商品開発に絶大な威力を発揮することになったのです。
これらの営業経験が糧となって、
「ソリューション提案力開発」コンサルテーションや
業界団体でのIT業界の営業ライセンス開発など、
自分のコンサルタントとしてのコアプロダクトを開発することができました。
おかげで多くの外資系 IT 企業や日本を代表するIT 系企業、通信事業者などで多くの機会を頂戴できたのは得難い財産と感謝しています。
高い理想、自己への欲求を持つことも素晴らしいことではありますが、
それにこだわりすぎず、
意図せざる偶発的な出来事も、自己の限界突破の機会として柔軟に活用することが、
「天職」による働く幸福に至る道だと言えるでしょう。