「幸福」とは何か(その21)宗教による幸福の時代⑤全ての仕事は「天職」働く人びと全てに等しい宗教的意義を認めたプロテスタンティズム

全ての仕事に「天職」としての宗教的意義を認めたプロテスタンティズム

 キリスト教の労働の意義肯定は、ルター、カルヴァンらの宗教改革によって、さらに積極的なものとなりました。マックス・ヴェーバーによる『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』はあまりにも有名ですが、ルターの天職観念、質素倹約、禁欲的生活を重んじる倫理的規範が、資本主義経済の発展、産業革命の精神的支柱となったことは確かでしょう。

英語で「Calling」という言葉は「天職」を意味しますが、これには「召命」、すなわち神からの呼びかけという意味が込められています。ルター、カルヴァンらによる宗教改革が画期的であったのは、世俗的職業に宗教的意義を認め、これを義務として遂行することが最高の道徳的実践であるとしたことです。マックス・ヴェーバーによればこのような世俗的職業の全てを「天職」と呼び、宗教的意義を認めるような言葉は、宗教革命以前には見られなかったということです。世俗的職業を聖職より下位におくカトリックの理念は破棄され、修道院での生活は現世の義務から逃れようとする利己的なものとさえ考えられました。

 カルヴァン派、ピューリタン諸派では、さらに「天職」の概念が職業選択の自由にまで押し広げられました。自らが天職を選び、神のために禁欲的に遂行すべきとされ、自らの個性の発揮と能力の伸長、高度な専門性の習得と仕事への責任感、仕事の方法、生産のしくみの改革を促進しました。それは、やがて近代資本主義の発展に繋がったとされています。

「世俗内的義務の遂行こそが神に喜ばれる唯一の道であって」「これのみが神の意志であり」許容されている世俗的職業はすべて神の前ではすべてまったくひとしい価値を持つ」[i]というプロテスタンティズムの精神は、全ての働く人々に、神から与えられた仕事と言う使命感、働きがいをもたらしたと考えられます。世俗的な職業に励むことが神に喜ばれることであるという確信は、働くことによる幸福感を大いに高めたことでしょう。
                   (松島 紀三男 イーハピネス株式会社 代表取締役)

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[i] マックス・ヴェーバー、大塚久雄訳『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』岩波文庫p111

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