「幸福の相場を下落させているのは、幸福自身ではなく、むしろ幸福ということばを軽蔑している私たち自身にほかならない」寺山修司
「幸福という言葉を口にするのは、何か気恥かしいものがある。それは、青春前期の少年少女の用語であって、人生が始まってしまってからは、もはや口にするべきものではないと思われてきたからである。
だが、トーマス・マンの「政治を軽蔑するものは、軽蔑に価する政治しか持つことが出来ない」というアフォリズムは、幸福の場合にもあてはまる。
幸福の相場を下落させているのは、幸福自身ではなく、むしろ幸福ということばを軽蔑している私たち自身にほかならないのである。」 寺山修司『幸福論』角川文庫