「幸せ」の語源
「幸せ」「幸福」の語源
従業員幸福度を論ずるに当たっては、まず幸福とは何かを明らかにする必要があるでしょう。「幸福」あるいは「幸せ」という言葉はいつごろ生まれたのでしょうか。
「幸せ」という言葉は、語源をたどると「為合わせ」という語が由来と言われています。「しあわせる(為る+合わせる)」の名詞形として室町時代に生まれたことばだということです。
本来、それ自体では価値を表さず、評価語の形容詞を伴って用いられたものが、江戸時代以降「しあわせ」のみで「幸運な事態」を表すようになったとされています[i]。
なお「しあわせ」に「幸」の字があてられるようになりましたが、漢字の「幸」は、古代の「手かせ」を意味し、刑罰から逃れる僥倖に恵まれることから「幸運」の意味を指すようになったという説が広く流布され、今や定説と言って良いほどですが、「幸」が「手かせ」とする根拠はないとの指摘もあります[ii]。
「幸せ」の「幸」の字源はさておき、もともとは「幸せ」とは、「幸運」な出来事にめぐり会うことであり、そこに人間の能動的行動の介在する意味は希薄であることは注目に値すると考えます。今日、「幸せ」とは人間の能動的意思が介在し実感するもの、主体的行動の結果としてもたらされるものという意味合いが、多く含まれると考えるからです。
ちなみに英語で「幸せ」を指す「Happiness」の語源は古ノルド語(古北欧の言語)の「happ」(機会)とされており、「happen」(起きる、偶然出くわす)という動詞も起源は同じです。 日本語も英語も「幸せ」ということばの語源は、偶然の機会を指すというのは興味深いですね。はじめは偶然の機会としての「幸運」を指していたものが、だんだんと人間が自ら作り出すものという、主体的意思を込めた意味が付加されていったものでしょうか。
[i] 参考資料;語源由来辞典
[ii] 参考資料;『「幸」の字源は枷の形ではないの論』平 春明 氏の指摘