「幸福脳」をつくる(第一回)
幸福を感じられるかどうかは、生活の有り様もさることながら、どのような脳を持っているかで、決まってくるというのをご存知でしたか。
同じレストランで、同じメニューを食べたとしても、「このお店高いなぁ~」と感じる方もいれば、「このお店は、この味とボリュームなら安いねぇ♪」と人によって反応は異なります。少々強引のようにも感じられますが、幸福感の感じ方も同じです。その方の記憶と思考のフレームに基づいて、価値判断をしているからなのです。
少々細かい話になりますが、脳を通して私たちは世界を見ています。脳の前頭部である前頭前野は、人間らしさを発揮する役割を担っています。過去、感情を伴った体験や経験の記憶の蓄積が思考のフレームを作ります。
作られた思考のフレームは、パラダイム、信念体系、ものの見方などと言われますが、その方らしさを表現します。
脳を通して、世界を見る、感じる、判断する、行動する。五感で情報を収集し、フレームを通して判断する。前頭前野は、認知、判断、思考、行動・実践、感情のコントロールなど高次機能を果たします。
そして、左前頭部は、ワーキングメモリー、言語処理、計画・行動・実践を担い、幸福感については、ここが活性化していると幸せを感じやすくなります。
右前頭部は、感情の窓、大脳新皮質より深い偏桃体などがある大脳辺縁系とコネクティビティがあり、ここが活性化していると不安や恐怖などネガティブな感情を誘発しやすい。つまり不幸を感じやすくなってしまうのです。
また、作業など意識的な活動をしていないとき、デフォルトモードネットワークが働きます。実は行動など活動しているときの15倍のエネルギーを消費していることが分かりました。脳は何もしていないぼーっとしている時の方が脳を使っていると言えます。
以前は、意識的に何かをしていないときは、脳は休息していて機能していないと理解されていましたが、実は情報整理をしたり自分モニタリングしたりと、とても重要なことをしていたのです。車で例えれば、走行する前のアイドリング状態です。
時々、何も考えずにぼーっとしていますか・・・この時間とても大切なのです。
この、ぼーっとしていて浮かんでくるイメージに身を任せているときに、右やや後ろの部位が活性化しているほど、幸福を感じられない、ということが今年8月京大の佐藤先生のグループによって世界で初めて発見され発表されました。
脳は活性化していないと集中力、認知力、思考力、判断力、行動・実践力は低下し期待に応えられない無能な人間になってしまう。しかし過度に活性化してしまうとイライラ感、怒り、不安や恐れ、浅はかな判断、感情の爆発など、幸福感とは縁遠く感情に流される厄介者になってしまいます。脳は左よりも右が過度に活性化していると幸せを感じられないようです。右楔前部が偏桃体とのコネクティビティが強いほど、不安や恐れを感じやすい脳、つまり周囲からの刺激・情報に過敏にネガティブ反応をし、不幸感を感じてしまう人なのです。
デフォルトモードネットワークが稼働している、ぼーっとしている時に、覚醒を抑え安定した状態にするには、脳波を直接調整するニューロフィードバックトレーニングが最も有効ですが、今すぐ実践できることは、マインドフルネス瞑想を1日1回5分の瞑想から始めるといいようです。
◇マインドフルネス瞑想の所作
・今この瞬間に集中することでデフォルトモードネットワークのさまよっている
脳回路を休める
①呼吸法 呼吸を味わう、雑念が浮かんだら呼吸に意識を戻して続ける
②食事瞑想 ゆっくり味わう、食感を楽しむ、食事にのめり込む
③歩行瞑想 足裏の感触、頬に伝わる風の感覚、草花の香り、鳥のさえずり
PCやスマホでインターネットでの情報アクセスが容易となり、脳は日々の生活の中で大量の情報処理を余儀なくされています。脳はインプットの量がアウトプットの量に比して高すぎるため、疲弊しています。現代人の低パフォーマンスの根源となっている脳疲労は、左前頭部の不覚醒や右前頭部の過活性として現れます。幸福脳を計画的に育むことは可能です。
まず、積極的にぼーっとしてみましょう! (加藤和宏 イーハピネス株式会社取締役)