「幸福」とは何か(その22)宗教による幸福の時代⑥職業選択の自由と職業の価値平等を教義とするイスラーム教

イスラム教は、キリスト教と同じく、『旧約聖書』『新約聖書』を聖典としていることを先に触れましたが、イスラム教の労働観はどのようなものでしょうか。

イスラム教でもキリスト教と同様、勤勉に労働に励むことが教義となっています。
イスラム教の聖典である『クルアーン(コーラン)』では、労働、仕事の実践の重要性が繰り返し述べられており、怠惰や無益な行為を、信仰心の欠如と見なします。

「神が生計の手段として日中を創られた」
とし、労働によって時間を有効に使うよう推奨されています。

仕事は「善いもの」「有益なもの」であれば、いかなる仕事も重要な役割を果たし、仕事は責務であると見なされます。

イスラム教の労働観の長所は、職業選択の自由と職業の価値の平等と考えます。

イスラム教はシャリーア(イスラーム法)によって認められた仕事の種類に反しない限り、
個人が自らの仕事を選ぶ権利を与えています。

また、イスラム教はあらゆる階級制度を否定し、
公正と認められた仕事に貴賎の差異はないので、
天賦の脂質、能力、価値観などに応じて、個人の多様性を積極的に追求すべきとされています。

このように教義を見る限り、
イスラム教は個人の自由な選択により、
仕事における自己実現によって働く幸せを追求する大きな力となっているように思えます。

しかし、現実にイスラム教圏の国々を見ると、国や地域によって随分違いはありますが、
女性の権利が不当に制限されていることが問題になっています。

クルアーンの多くの言葉は,男女は平等であることを告げていますが、
女性に従属的な役割を与えていると思われる言葉もあります。

男尊女卑、女性差別の問題は、イスラム教の出現前の部族文化、以前からの慣行に根ざしているとも考えられ、
イスラム教の教義が持つ本質的な問題と断定することは慎重であるべきと考えます。
女性を従属的な状態に置く文化は、歴史的にキリスト教圏の国々でも多く見られたことです。

現実に多くの女性が不当な差別に苦しんでいる状況はイスラム教圏の国々が降伏すべき課題ではあると思いますが、
他の宗教同様、イスラム教に、人々が働く幸福を追求する上で、それを精神的に宗教的権威によって後押しする、良い影響が多いことは事実だと思います。
   (松島 紀三男 イーハピネス株式会社 代表取締役)

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