ギリシア神話「パンドラの筺」~幸福における希望の重要性

幸福における希望の重要性は、何度も触れています。
そこで言及したギリシア神話の「パンドラの筺」について、
現代の我々は、ヘーシオドスの詩を通じて読むことが出来ます。
幸福における希望の重要性、
人間にとって、希望がいかに不可欠であるかの証左になると思います。
それまでは地上に住む人間の種族は、
あらゆる煩(わずら)いを免れ、苦しい労働もなく、
人間に死をもたらす病苦も知らず暮しておった。
[人間は苦労をすればたちまち老いこんでしまうものであるからな]
ところが女はその手で甕(かめ)の大蓋をあけて、
甕の中身をまき散らし、人間にさまざまな苦難を招いてしまった。
そこにはひとりエルピス(希望)のみが、堅牢無比の住居の中、
甕の縁の下側に残って、外には飛び出なかった 。
(ヘーシオドス『仕事と日』松平千秋訳、岩波文庫、1986年、pp.22-23.)