幸せになる方法②能力開発について 幸福度・EHを高めるには(その2)
2.幸福の客観的条件を創る
(1)自分を変える
前の記事で、幸福に対する考え方を変えることを述べましたが、もう一つ大事なことは幸福にかかわる内外の客観的な状況を変えることです。
内側を変えるということは、自己を変えるということです。「幸福に対する考え方を変える」ことと違うのは、自分自身の能力や判断、意思決定、行動など、自分のこととはいえ客観的状況を変革するということが違います。
どちらも、自分を変えるという意味では、共通のことと言えますが、前者が現状を解釈することによって幸福感を高めるのに対し、自己の内外の客観的状況を、より「Well-being」(ウェルビーイング)なものに変革するという点が異なります。
変革すべき自己の内外の客観的状況とは内側と外側に分けられますが、外側については職場や組織の状況、社会や政治、経済などですが、これはまた後で触れることにしましょう。
まずは自己の内側の状況ですが、その主な要素は次の4項目です。
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①自己の成長
自己の能力開発に注力する
②意思決定のやり方を変える
より適切な判断により、幸福な意思決定、不幸を避ける意思決定を心がける
③習慣を変える
日常の行動に決定的な影響を及ぼす習慣を効果的なものに変える
④ 無自覚の領域にアプローチする
無意識、脳波などの精神医学を活用する
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順番に説明していきます。
①自己の成長
幸福は待っていても向こうから訪れてはくれません。自分の力で切り開いていくことが必要です。
その意味で幸せになる最も確実な方法は、それがすべてではありませんが、幸福の原動力は能力開発であると断言できます。
ただ、ここで言っている能力とは、何も知的能力だけど限りません。
少し能力の内容の話をしましょう。
周りの人との関係において発揮される能力、例えば、
家族を愛し、愛される能力、周りの人とうまくやれる能力、周りから頼りにされる能力、そういったことも、大事な能力です。むしろ知的能力より重要と言っても過言ではありません。
前者の知的能力に代表される、「自分だけで発揮される能力」を英語ではアビリティ(Ability)と言います。
後者の「周りの人との関係において発揮される能力」をコンピテンス(Competence)といいます。
アビリティは IQ (Intelligence Quotient)と密接な関わりがありますが、 コンピテンスはEI(Emotional Intelligence)、 EQ(Emotional Quotient)、日本語の意訳としては「心の知能指数」と呼ばれる場合があります。「人間力」というのも同じような意味で使われる場合が多いと思います。
アビリティもコンピテンスも両方重要な能力ですが、
「幸福力」というのがあるとすれば、 どちらかと言うと、コンピテンスの方が大きく幸福と関わっているようです。
筆者の調査でも、幸福感の高い人は「家族との関係がうまくいっている」「知人友人などの交友関係が豊かである」といった因子が、統計的に強く影響しており、因果関係の存在が推論できます。
また、経験的にもビジネスで大きな仕事を達成している人は、 例外なく人脈が豊富です。
反対に、いくら知的能力、アビリティだけ高くても、コンピテンスが低ければ、やりたいことがあっても成功はおぼつきません。
例えば、非常に勉強熱心で、 資格取得さえすればうまくいくと思ってる人がいます。そういう人に「お客になってくれる人は何人いるの?」と聞くと、名前が上がらなかったりします。そういう場合、その資格を活用したビジネスは、ほとんどうまくいきません。
こう言うとアビリティは不要と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。両者は密接に関係しています。
知的能力が高いということは、それはそれで大事な魅力ですし、その能力を強みにすることによって、いろんな人から頼りにされて人脈が広がっていくでしょう。
語学の能力もアビリティと言えますが、英語をはじめ、語学力が高いということはそのぶん世界中の人とのネットワーク構築に役立ちます。知的世界だけでなく行動範囲も広がります。
つまりコンピテンスは幸福になるために必要不可欠な条件ですが、アビリティはコンピテンスを高めるために役立つ、と言えるでしょう。
次に能力開発の基本的進め方について、お話しします。
能力開発で重要なことは、先送りせず、自分の能力向上に、すぐに着手するということです。
しばしば人間は、さして重要でもなく、緊急度の高い雑事(これを時間泥棒と言います)に振り回され、緊急ではないが重要なことを先送りする傾向があります。
このことはスティーブン・R・ コヴィーの『7つの習慣』でも強調されています。
(スティーブン・R・ コヴィー著、『7つの習慣』pp.192-246)
幸福度を高める上で重要な最優先事項を判断するツールとして
「重要度緊急度マトリックス」というものがあります。
【重要度緊急度マトリックス】
重要かつ 緊急 →意識しなくてもやる | 重要だが 緊急でない ※ここを意識することが大事!! |
重要でないが 緊急 →時間泥棒 | 重要でも 緊急でもない 例)帰宅したらとりあえずテレビをなんとなく見る |
「緊急ではないが重要なこと」の代表的なものが能力開発なのです。
何が必要か、これを一言で言えば、
「今求められてないが、あなたの夢を実現するのに必要な能力開発、自己啓発にすぐ着手する」
ということです。
能力開発には長期を要しますが、差し迫って求められないことも多いので、どうしても先送りしがちです。
まさに「少年老い易く学成り難し」ですね。
『偶成』朱熹
少年易老學難成(少年老い易く 学成り難し)
一寸光陰不可輕(一寸の光陰 軽んず可からず)
未覺池塘春草夢(未だ覚めず池塘 春草の夢)
階前梧葉已秋聲(階前の梧葉 已に秋声)
次回は意思決定についてお話しします。
(松島 紀三男 イーハピネス株式会社 代表取締役)